「生まれてから今日までの人生のなかで、一番美味しいと感じた食べ物は何ですか?」
私はパンです!
え? と思うかもしれませんが、50年ちょっと生きてきた中で一番美味しいと感じたのはお店で食べた高級料理などではなく、絶食後にたべた食パンです。
絶食後のパン
美味しかったパンの話をするには、絶食をする経緯を書かなければなりません。ダイエットや修行で絶食したわけではなく、妊娠中の絶食です。
妊娠悪阻
20年以上前の昔話ですが、少々お付き合いください。
私は人生で1度だけ出産を経験しました。その初めての妊娠で、妊娠悪阻というものになり入院しました。(妊娠悪阻はつわりが重症化したものです)
妊娠悪阻は、ケトン体の数値で判断するらしいのですが、私の場合はケトン体+++(3プラス)でした。
検診のときに「つわりがひどくて何も食べられない」と言うと「つわりはそういうものだよ」と先生に言われました。そう言われたのでそのまま帰宅したのですが、それから2日後どうしても我慢できなくなり再び受診しました。

ありとあらゆるニオイが駄目なんです。何も食べられません。

そういう人は多いですよ

食べ物を想像するのも無理だし、・・・人のニオイも自分のニオイも世の中すべてのニオイが耐えられないんです。

うーーん・・・、つわりはそういうものだからね。
好きなものだけでもいいから食べてみて

ほんと無理なんです!水も飲めないし、昨日から何も食べてないし、自分の唾液すら飲み込みたくないくらい、唾液も無理なんです(涙目)
ここでようやく先生が、再検査をしてくれました。

いますぐ入院してください!
検査結果を言う前に、第一声が「入院してください」でした。
体重は妊娠がわかってから2キロほど落ちていました。
人生初の入院
その場で即入院(人生初の入院)が決まり、絶食生活がスタートしました。
最初の3日間は点滴だけの生活でした。20年以上前のことなので、どんな点滴だったのか覚えていません。
4日目は点滴をしながら白湯、味噌汁の上澄み、重湯を口にしました。その味噌汁の上澄みもかなり美味しく感じました。
入院初日は食事のニオイに耐えられなかったのに、この頃にはつわりの気持ち悪さはなくなり、同室の妊婦さんの食事の時間になると、食事のニオイでお腹がグーグーグーグー鳴りっぱなしで空腹との戦いでした。 お腹が鳴っている私も、その音を聞きながら食べる同室の人もお互い気まずかったです(笑
同室の人が「一人で食べてごめんねー」と謝りながら食事をしていました。
待ちに待った食事
白湯、味噌汁の上澄み、重湯、重湯に味噌汁の上澄みを加えたもの、おかゆ、すべてクリアしたので「明日はパンを食べてみようね」と看護師さんに言われたときは感動でした。
食事の時間がこんなにも待ち遠しかったことはありません。
8枚切りの薄い食パンに普通の(たぶん安い)イチゴジャムを塗っただけのものが1枚。
一口たべたら唾液腺から唾液があふれ出て、あまりの美味しさにホッペが落ちそうでした。

世の中にこんなに美味しいものがあったなんて!
大げさではなく、本当にそう思いました。
いまも時々、イチゴジャムをぬった食パンを食べるのですが、味は同じはずなのに美味しさはかなり違います。安いイチゴジャムも、手作りジャムも、ちょっと高いジャムも、いろいろ食べましたが、どのジャムもあのときの美味しさにはかないません。
退院とつわり
最高の食事ができて、つわりの症状がほとんど出なくなったので退院しました。
しかし、退院後は普通のつわりに悩まされました。悪阻のときに比べればマシでしたし、自律神経失調症のときもつわりのような症状が出ていたので、ひたすら気持ち悪さを我慢して生活しました。
食事ができる嬉しさ
妊娠悪阻以前にも、自律神経失調症のため長い間ご飯を美味しく食べることができなかったので、食事が摂れないつらさを経験してから、ご飯が食べられることはとても幸せなことなんだと実感しました。
ご飯が食べられるだけで幸せ♡